今村昌平よ蘇れ! 「かいじゅうたちのいるところ」DVDで観賞。
日本でもおなじみモーリス・センダック作の絵本「かいじゅうたちのいるところ」を、スパイク・ジョーンズ監督が映画化した作品「かいじゅうたちのいるところ」をみた。
日本でもそうとう有名な絵本だが、アメリカでは知らない人はいない、というか読まずに大人になった人間はいないぐらいの作品なのだそうだ。
オバマ大統領が就任直後の復活祭のイベントで読み聞かせをしたことでさらに有名になった。
が、映画化構想自体は10年ちかく前からあったそうだ。
日本でいうと「ぐりとぐら」とかだろうか。いや、「モチモチの木」あたりが近いかもしれない。「ぐりとぐら」も「モチモチの木」も「かいじゅうたちのいるところ」も、永遠の名作にちがいない。
もしボクが「モチモチの木」を映像化する任に立つプロデューサーならば、まちがいなく、なんの迷いもなく今村昌平に監督をお願いする。「モチモチの木」の悲しみや自然に対する畏怖はそのまま「楢山節考」につらなる。遺作となった「11'09''01 / セプテンバー11」の凝縮された自然描写と田口トモロヲが演ずるヘビ男の恐怖は、モチモチの木の枝の恐怖にそのまま転化できる。われながら作品テーマと監督のマッチングがこんなによい組合せは他に考えられないぐらいだ。
「ぐりとぐら」ならCGしか考えられないのでジョン・ラセターだろう。それ以外だとどうしても失敗する気がする。
と、考えていて「かいじゅうたちのいるところ」なら誰にどうとってもらったらいいのか、あらためて考えずにはおれなくなった。
・・・たしかに、スパイク・ジョーンズはいいアイデアかもしれない。ビョークのPVであれほどバケモノチックな美を演出できるなら、センダックのあの絵にも挑戦し、きっと成功を収めてくれるかもしれない。
ところがなにがどうなるかわからないのが映画であり表現行為なのだ。
と、全体の感想を書く前に、非常に少ないのでまずいいところを書いておこう。
1.あまり特撮の技術は知らないのだが、かいじゅうたちの表情をワイヤーロボットとCGで操作している。この表情の微妙さをロボットにさせることができるのなら、もう俳優はいらないのではないだろうか。この手の技術は他のSFなどでも見たことがあるが、あのかいじゅうの表情はすばらしく、他の映画の1歩も2歩も先を行っていると思った。脱帽だ。
2.NHK坂本龍馬のドラマの画面の色に関しては、かなり悪口をいわれているようだが、NHKの潤沢な予算と圧倒的な視聴率で実験的なこころみをするとは、そうとうな度胸とプレゼンテーション力があったのだろう。しかし失敗してはいけない。ドラマに集中できないほどの結果なら、実験はしなかったほうがよかったのかもしれない。むつかしいところだが。
しかし「かいじゅうたちのいるところ」は成功している。あの色がなければ全体をまとめるものがなくなっていたかもしれない。
以上である。あとはとくにいいところがない。冗長にすぎた。スパイク・ジョーンズが監督するなら、いっそ60分で切り上げて二本立てにしたほうが価値が出た気がする。で、同時上映は今村昌平の「モチモチの木」にする。今村昌平は死んでいるが。